NBA選手の中で誰が一番好きかと聞かれたら、私はこの選手を挙げます。
彼のプレースタイル、メンタル、全てが好きですし、とても影響を受けました。
そんなこの選手もついに昨シーズンで現役を引退しました。
とても感慨深い気持ちでいっぱいだったので記事にしようと思います。
彼の名前はDirk Nowitzki(ダーク・ノヴィツキー)
NBAの長い歴史のなかで、21年間同じチームに属した唯一の選手です。
1998年にNBA入りしたノビツキーはドイツ出身の選手で7フッター(2m13cm)の長身と多彩なスキルを買われてダラスマーベリックスに入団。
しかし、当時のNBAは長身の選手はインサイドでゴリゴリに体をぶつけあって点を取るのが主流だったこともあり、線の細いノビツキーは通用しないと言われていましたが、ノビツキーは得意のシュートセンスでメキメキと頭角を現します。
代名詞となった7フッターから繰り出される片足のフェイダウェイシュート(後方に飛びブロックを避けながらうつジャンプシュート)はNBA史上最も止めにくいシュートと評され、彼がNBAに与えた衝撃と文化は凄まじいものでした。
当時のアメリカ至上主義のNBAでは、アメリカ人以外の選手は中々活躍の場を得る事は出来ませんでした。しかし、2007年には欧州出身選手で初のシーズンMVPを受賞し、2011年には球団史上初のチャンピオンにも貢献し、ファイナルMVPも獲得。
そんなノビツキーの活躍があったからこそ、現代のNBAにはたくさんのヨーロッパ人選手が活躍しているといっても良いでしょう。
そしてマーべリックスのオーナーであるマーク・キューバン氏との関係も胸が熱くなります。
決して強豪チームとはいえなかったマーベリックスでしたが、ノビツキーが加入してからというもの、マーク・キューバン氏はノビツキーを中心にチームを作り続け、2011年の優勝時には、チームメイトの平均年齢が30歳を超えているベテランチームながら、誰一人優勝経験が無いという異色のチームでした。
そんなマーベリックスが優勝したのは後にも先にもこの一回だけで、それ以降はプレーオフすら危うい弱小チームに戻ってしまいました。
昨今のNBAではスター選手が次々と多額の契約金によって移籍を繰り返して、ビジネス的になっています。
特に、年齢によって旬を過ぎた、かつてのスター選手がチームから放出され貰い手もないといったことも増え、見ている側としてはなんとも言えない気分になるものでした。
当然、2011年以降優勝から遠ざかっているマーベリックスもノビツキーを放出して若い選手やスター選手を呼び込むことは出来たはずです。
しかし、年齢によって衰えていくノビツキーの出場時間をギリギリまで削ることで、ノビツキーに少しでも長くプレーをさせたい、そして少しでも長くそのプレーを見ていたい。そう言っていたマーク・キューバン氏に応えるようにノビツキーも自身の給料の減額を提案。新しい戦力、既存のチームメイトへのサラリーにまわすように進言していたのです。
その姿は最早オーナーと選手という垣根を越えて、親友あるいは家族のようでした。
現役最後のホームゲームでは、30得点の活躍をし、マイケル・ジョーダンがもつ(40歳と20日)の記録を塗り替え、史上最年長(40歳と294日)で30得点以上を記録しました。
マーク・キューバン氏はノビツキーの引退後について、既にマーベリックスの組織の中で彼専用のポストを用意していると語っており、ノビツキーがチームのフロント入りすることが決まっているそうで、彼らの関係はこれからも続いていくのだと思います。
NBAという世界で、欧州人選手としての道を切り開き、チームの為にすべてを尽くし、チームも彼の為にすべてを尽くしました。
ビジネスという概念を超えたオーナーと選手の関係はとても考えさせられます。