弱肉強食の革命が起きやすい国は疲弊する

家康が立てた大方針の一つに厳密な長男相続制度がある。賢愚(けんぐ)に関わらず長男が全財産を相続するのであるが、これほど徹底した能力無視と年功序列は考えられない。能力により天下を取った家康は180度方向を変え能力を全く無視する方針に出た。

極端な例が九代将軍家重である。八代将軍吉宗は英明であり幕府中興の人といわれているが、その長男の家重は愚鈍であり幼少の時に酒と女の味を覚えたため健康を損ない、脳を害して言語不明瞭となった。これに反し弟の宗武は馬術によく弓術によく師に舌を巻かせた英才で、『古事記詳説』以下、多くの著作すらある。

酒色に淫した長男家重と、文武両道にずば抜けた次男の宗武を並べた時、父の吉宗の愛が次男の宗武に傾いたことは当然である。しかし、吉宗は家督相続に関しては迷うことなく長男を立てて九代将軍にした。理由は明らかである。「もし予が才能と人物によって宗武を次の将軍に立てるならば日本中の大名にお家騒動が起こる」というのであった。

農耕型・反能力主義的思想の極致である。家重のような者でも長男であれば将軍になったから幕府の基礎が揺るがなかったのである。(P.93-95)

「時代」を見抜く力~渡部昇一的思考で現代を斬る(渡部昇一・著、育鵬社)

この話はとても重いです。

いまの日本社会は能力主義で能力の高い者が制する社会、
勝ち負けの格差が明確になる社会
つまり、日本の古典的な農耕型社会からアメリカに見られる騎馬型社会に移行しつつあるわけですが

そんなことをしていたら
国が疲れ切って疲弊してしまうよ、と。

「競争」を旨とする「新自由主義」なんて言葉も昨今耳にしますが
菅首相は新自由主義に近い考えとも言われます。

そろそろ「それってどうなの?」という所で

今まさに時代の転換点(考えるべきポイント)に
私たちが置かれていることは間違いないでしょう。

「弱肉強食の革命が起きやすい国は、一方で疲弊しやすい」

日本は世界で最も古い国であると、ギネスブックに掲載されています。その理由を考えることは、これからを考えることに直結します。

この記事を書いた人

アートにゃんこ

2017年に突如生まれた謎の化け猫(?)「ゆるキャラグランプリ2020 ファイナル」に出場間に合わず。ゆるキャラの時代も終わっちまったぜ…。