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好きなことだけするのはそもそも「道楽」ともいえる。夏目漱石は『道楽と職業』の中で、人のためにするのが職業であるといっている。人のためにする量が多いほど、自分が受け取る報酬も多くなる。
~人の為にする分量即ち己の為にする分量であるから、人の為にする分量が少なければ少ない程自分の為にはならない結果を生ずるのは自然の理であります。之に反して人の為になる仕事を余計すればする程、それだけ己の為になるのも亦明かな因縁であります。此関係を最も簡単に且明瞭に現はして居るのは金ですな。~
職業というのは人のためにする、いわばサービスである。人のためにするというのは世の中で要求されるリクエストに応えるということである。他者の願望を実現する、いわば他者実現をすることが職業である。しかし、自己実現を優先させれば、それは職業というより道楽になる。禅僧は自分が悟るために修行している。たとえ厳しい修行でも他人のためではなく自分のために行っているならば、それは道楽だということだ、と漱石はいう。
「新しい学力」(齋藤孝・著、岩波新書)P.109より
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自分のしたいことが世の中でサービスや商品として売れるとは限らない。自分にとって「何で?」と思うサービスや商品が売れたりしている。と、いうことは往々にして起こります。
自分の好き嫌いはともかく、ニーズがあるからそのサービスや商品が売れている、ということは確実にいえます。
ニーズのないところに商売は発生しない、とも言い換えられますね。
「人の役に立つ」「世の中の役に立つ」を社是として掲げている会社もあります。
自分がどう動けば人のためになるのか、を追究することでそこにビジネスが生まれるのでしょうが、
更に突き詰めると「問題意識」。これに尽きるのではないでしょうか。
若いときに何となく「こんなものかな」と気楽に過ごしていたものが、年を重ねて「これは良くないのではないか?」と問題意識を持つことが出てきます。その問題意識を掘り下げた所に、では自分はどうすれば良いのか、という行動の指針が生まれ、それが人の役に立つことであればビジネスに展化していく、ということではないでしょうか。