NBAを観戦しはじめてから、もう10年以上が経ちます。
NBAといえば、世界最高峰のプロバスケットボールリーグですが、彼らの動きは日本人の私の想像を遥かに超えていました。スーパースターたちが繰り出す異次元のドリブル、激しいダンクやブロックはもはやアニメを見ているような感覚で魅了されNBAのファンになりました。
しかしそんなスーパースターたちを押しのけて、NBAを5回制覇しそのうち3回はファイナルMVPに選ばれた歴代最強のPF(パワーフォワード)でありながら最も地味だと言われた男が、2016年シーズン終了とともに引退をしました。
彼の名は、ティム・ダンカン。通称The Big Fundamental(偉大なる基礎)。私の大好きな選手であり、NBAの見方を変えてくれた選手のひとりです。
見ていて”つまらない”と言われることの多かった彼のプレーは、誰よりも基本に忠実で、教科書に載っていることだけを徹底的に突き詰めたような選手でした。そして、このつまらないスーパースターは人間離れしたスピードやジャンプ力、鋼の様な肉体を備えたスター選手たちと対等以上に渡り合い、数々の歴史的記録を残しました。
このダンカンという男、つまらないのはプレーだけではなくプライベートでも同じで、無表情に無口で、必要以上のことは口にしないのです。
数々のスーパースターたちは引退時にセレモニーをやったりスピーチをしたり、中にはファンと各所をめぐる引退ツアーをやる者がいたり。派手好きな人が多いアメリカにおいてこれらはもはや伝統なのですが、最後まで”らしさ”を貫いたダンカンは19年間という長いキャリアの最終試合は、試合終了のホイッスルと共にファン達に手を挙げて見せただけ、そのままロッカールームへと去っていきました。
基本が大事、基本に忠実、彼はそれを体現していた選手です。極限まで突き詰めた基本はすべてが洗練されていて無駄がなくわかっていても止められない。
ダンカンのように多くは語らなくとも、分かりますよね。
彼からは学ぶべきことが多くあります。きっとバスケだけでなく、なんのスポーツでも、仕事でも、全てにおいて基本に勝るものはないのでしょう。
“テクニカルに打ち勝つなら、シンプルが一番さ” ― Tim Duncan